2009年08月31日

ポニョへの情熱大陸

レッスンをしていると、たまに「先生、これが弾きたいんです!」と言って、自分で用意した楽譜を持ってきてくれる子がいます。

そうした場合、多くは久石 譲さんのお書きになったスタジオ・ジブリの映画音楽や、葉加瀬 太郎さんの「情熱大陸」などですが、やはりどれも共通しているのは、生徒の皆さんが普段耳にしている作品だということです。


スズキ・メソードの生徒たちは、普段から音楽を良く聴くように、教本に付属のお手本を良く聴くように、と指導者から言われています。

それは、無形の音楽的センスをこれほど高く深く、しかも本人も気付かないうちに、いつの間にか身につけてしまう、などという方法は無いからでもありますが、同時に、「この曲を弾きたい!」という学習意欲を高めることにも繋がっているのです!

子供たちが、日頃聴いている曲を弾きたがっていることが、何よりの証拠です。


飯塚
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2009年08月30日

ヘンデルは歩いてこない

今年はヘンデル・イヤーといことは、以前このブログにも書きました。

ヘンデルは1685年生まれ、1759年没ですので、2009年が没後250年記念に当たるのですね。


ヘンデルと言えば「メサイア」などが有名です。

メサイア」のように、オーケストラと合唱、そして配役を伴った独唱者で一つの物語を歌によって上演する形式を「オラトリオ」と言います。

オペラとどう違うかというと、ものすごく簡単にいうと、舞台装置の有無、ステージを動き回るような実際の演技の有無、というところでしょうか。


オラトリオもさることながら、彼の最も得意としたジャンルはオペラでした。


オペラもオラトリオも、1作品大体2時間くらいで上演されるとして、1つ完成させるのに大変な時間と労力が必要とされそうですね!


ところが、このオペラとオラトリオを、ヘンデルは何と70作品近く作っているのです!全くスゴイことですよね!


残念ながら、普段はなかなか「メサイア」以外のヘンデルのオペラ・オラトリオを見る機会がありません。


もちろんバロックのオペラやオラトリオは、モーツァルトなど古典派以降のオペラと違って内容もある程度決まったもの…つまり、英雄の逸話、歴史もの、宗教的なものがほとんどです。ごく普通の一般大衆が主役の恋愛劇などは描かれません…。


しかしそれだからと言って、ヘンデルのオペラの価値が下がることがあるはずがありません!

素晴らしい音楽の宝庫なのです。


ヘンデル・イヤーの今年、まだまだ見る機会もあるはずです!

向こうからやって来ないなら是非、自分から機会を作ってしまいましょう!

飯塚
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2009年08月29日

意外な人物が

バッハのピアノ曲の一つに「イタリア協奏曲」と呼ばれるものがあります。

実際バッハが付けたタイトルは「イタリア風協奏曲」でしたが、これはこの曲が、当時イタリアで流行していたヴィヴァルディ(を筆頭とするヴェネツィアの作曲家たち)のスタイルで書かれたものだったからです。

ヴィヴァルディといえば有名なピアノ曲が!…1曲もありません…。では何故ヴィヴァルディのスタイルなのかというと、ヴァイオリンやオーボエなどの旋律楽器がオーケストラの伴奏で演奏する、あの一般的な協奏曲を模したものだったからです。


バッハの活躍した当時、ピアノは実はまだキチンと発明されておらず、鍵盤楽器の中で最も頻繁に使われたものの一つがチェンバロ(英語ではハープシコードと言います)でした。


チェンバロは豪華なものは鍵盤が2段になっています。

下鍵盤の方が少し大きい音、上鍵盤の方が少し小さい音がします。いずれにしても、今のピアノの音量には届きませんが!


バッハはイタリア協奏曲の中で、さかんに「フォルテ(強く)」と「ピアノ(弱く)」の指示を出しているのですが、これはチェンバロにおいて、下段を弾け、上段を弾け、という指示なのです。


音の(多少)大きな下段はオーケストラ・パート、音の(多少)小さな上段は独奏パート、と言った具合です。


ですから、現代のピアノでこれを演奏する際は注意が必要です。独奏パートが華やかに活躍すべき場面を、単に小さく弾いてしまう危険性もあるからです。想像するだけでとても難しいですね!


さて、このイタリア協奏曲を日本において初演した人物をご存じですか?


答えはなんと、あの滝 廉太郎なんです!ちょっとビックリですよね!


飯塚
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2009年08月28日

田園風

スズキ・メソードの教本の中に収められた曲に、「ミュゼット」の名を持つものが出て参ります。

バッハをはじめ、バロック時代の作曲家達が数多く作曲しました。


この「ミュゼット」は、現代フランス語では「アコーディオン」のことですが、アコーディオンは1800年代に入ってから考案された楽器なので、バロック時代にはまだ存在していませんでした。


ではこの場合の「ミュゼット」は一体何を指しているかというと、「バグパイプ」のことなのです。厳密にいえば「バグパイプに似た構造を持つ、ミュゼットという楽器」なのですが、見た目や音などのイメージは、小さなバグパイプといった感じです。


バロック時代のフランスでは、太陽王と言われたルイ14世がとても踊り好きだったため、王お抱えの作曲家たちは皆、ダンス、バレエの曲を沢山書き残しました。


ですからフランスにおいては、アルマンド、クーラント、サラバンド、ガヴォット、メヌエット、ブーレ、ジーグ、パスピエ、シャコンヌ…などなどは、舞踏会のなかで実際に踊るために作曲したものだったのですね。こうしたダンス曲を一纏めにして「組曲」と呼んだりしています。


ちなみにドイツの作曲家であるバッハも、このような曲を沢山書いていますが、バッハの場合は、実際に踊るためというよりは、フランスの流行りを真似て、フランス風の曲を書いた、と言った方が当てはまるかも知れません。


さて、そのルイ王朝下のフランス貴族達の間に、「田園趣味」が流行していました。ものすごく簡単に言うと、郊外の雰囲気にあこがれ、ピクニックなどして楽しんでいたようです。


バグパイプは羊飼いたちの楽器でもありましたから、その音によって「田園」の雰囲気を楽しんだのでしょう。当時のフランスでは楽器の「ミュゼット」そのものも大変流行したみたいですね。


「ミュゼット」以外の楽器、たとえばチェンバロや、ヴァイオリンや、オーボエや、オーケストラ全体でも、ミュゼットっぽい音楽が演奏されました。すなわち、バグパイプのように、ずっと同じ音の低音が鳴り渡る上に、のんびりとしたメロディーが乗っかっている、あの雰囲気です。


ですから「ミュゼット」というタイトルを持つ曲には、必ず「ずっと同じ音で鳴り続ける低音(ドローンと言います)」が聞かれます。


また、「ミュゼット」は良く「ガヴォット」と結びつきます。ガヴォットを演奏していると、部分的にミュゼットが登場することが本当に良くあります。(モーツァルトのヴァイオリン協奏曲 第4番の第3楽章にも、部分的にこのガヴォット・ミュゼットのペアが出現します。)


そうした場合、少し「田舎っぽく」演奏するのがコツです!?少なくとも、シャキシャキと都会風に弾いてはいけません!


ただ私のように、「身体からみなぎる真の田舎臭さ」を出しすぎてもいけません!

飯塚
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2009年08月27日

歌うように

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲を学習するにあたって、どうしても聴いておきたい曲があります。

同じくモーツァルトの書いたモテット、「エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ) “Exsultate, jubilate, K.165(158a)”」という声楽曲です。


ソプラノが主役になり、オーケストラの伴奏に乗って美しいメロディーを歌いあげる曲なのですが、これがまさに「ソプラノのための協奏曲」とでも言えるような作りをしているのです。

曲全体の構成も、初めに元気で楽しい第1楽章的な部分があり、次にしっとりとした第2楽章が続き、最後に軽快な第3楽章にあたる部分が奏されます。

これが驚くほどヴァイオリン協奏曲を演奏する上で参考になるのです。

特に第5番は、この曲のイメージそのままに演奏することが出来ます。



よく、楽器を弾く人間は「歌うように弾きなさい!」と言われます。

特にモーツァルトではそうです。


しかし、どのように歌えば良いのかというヴィジョンが頭の中になければ、それを楽器で再現することなど出来るはずがありません。

ですから、楽器を扱うものもキチンと声楽を勉強するか…さもなくば、声楽曲をたくさん聴いて、イメージを頭に蓄積しておくことが必要でしょう。


同じ「歌う」でも、宗教曲の厳格なイメージなのか、オペラのプリマ・ドンナのイメージなのか、合唱曲の1パートを担当しているかようなイメージなのか。


18世紀の音楽家たちに広く浸透していた格言的なものの一つに、「歌えないものは弾けない」というものがあります。

楽器は、「楽器」の中で終わってはいけないのかも知れませんね。

飯塚
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2009年08月26日

チェロ駅伝

チェロ協奏曲には「3大チェロ協奏曲」と呼ばれる有名なものがあります。

1つはシューマン、1つはドヴォルザーク、そしてもう1つがハイドンのものです。


ハイドンはチェロ協奏曲を2曲書いています。

第1番 ハ長調はスズキ・メソードの卒業検定曲にもなっていますので、そちらでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、3大コンチェルトの1つに数えられているのは第2番 ニ長調の方です。


この2曲はどちらも作曲当時ハイドンが務めていた"エステルハーズィ"という貴族のお抱えオーケストラでチェロを弾いていた、アントン・クラフトという人のために書かれたと言われています。


それで驚きなのが、このエステルハーズィのオーケストラには、なんとチェロ弾きがアントン・クラフト1人しかいなかったということなんです!

確かにハイドンが活躍していた時代のオーケストラは現代のものと比べて非常に小編成で、扱う楽器数も少なく、一人の奏者が1曲の中で複数の楽器を掛け持ちすることもまれではありませんでしたから、せいぜい40人もいれば大きな方かも知れません。

エステルハーズィのオーケストラはそれよりもっと小規模で指揮者もいませんでしたが、きっとその分、音楽監督であるハイドンのもとに親密な演奏が繰り広げられていたに違いありません。


ご存じのように協奏曲はオーケストラの伴奏の前で独奏者が華やかな主役を演じますが、アントン・クラフトはこの伴奏と独奏の二役を一人でこなしていたことになります!


そのためハイドンのチェロ協奏曲では、独奏チェロが弾いている間は伴奏パートのチェロはお休みになっています。

反対に独奏が休んでいる間は伴奏が活躍するというわけです。


もちろん現代ではそれを分業して演奏しますが、クラフトは当時1曲中休まずに大変でしたでしょうね。協奏曲中、独奏者はメロディーの切れ目で普通お休み出来るのですが、彼はそれをマラソンか駅伝のようにずっと演奏し続けたのですものね!

今度この曲を耳にする際は、アントン・クラフトのことを思い出して聴いてみて下さい!

飯塚
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2009年08月25日

一人ずつ

ハイドンといえば交響曲を数多く作曲しことで有名です。107曲も書いたことから、「交響曲の父」とも呼ばれています。

ハイドンの交響曲は非常にユニークなものが多く、ニックネームを持つもの沢山あります。

たとえば、「朝」「昼」「晩」「火事」「悲しみ」「校長先生」「うっかり者」「時計」「軍隊」「V字」「ロンドン」などなど、まだまだ沢山あるのですが、中でもとりわけ面白いのが第45番「告別」です。


まず調性が「嬰ヘ短調」というのも強烈です。ハイドンといえども、この調は1曲しか使っていません。

ハイドンが活躍したこの「古典派」と言われる時代は、簡単に言うと「誰が聞いても楽しめる、明るくて分かりやすい音楽」が非常に好まれました。

ですから、短調が支配するこの曲は、とても異質な感じがしたはずです(もちろん「疾風怒涛期」という、こうした異質な曲が流行した時期もありましたが)。


しかしこの曲を、最もユニークならしめているのは、その最終楽章です。

なんと、曲が終わりに近づくに従って、演奏者が一人ずつ舞台から去ってゆき、最後には2人だけが残ります。


これはCDなどで聴いてもあまり伝わらないのです…というのも、「ホルンが休み」「オーボエが休み」「チェロが休み」なんてことは、シンフォニーを演奏中には普通にあることなので、舞台から去っていく姿が見えなければ、聴いている側は「単なる休みかな?」と思ってしまいます。


ところが、今年の1月1日に行われたウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートで実演を見ることが出来たのです!

ハイドン・イヤーを記念して取り上げられたのですが、なかなか第45番の実演を見ることは少ないので、非常に貴重な映像でした。


機会があったら皆さんも是非ご覧下さい!

飯塚
ラベル:ハイドン
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2009年08月24日

当たり前のことが、なかなか難しい

なかなか思うように弾けないフレーズがある。

何度も何度も繰り返してトライするが、やはりなかなか成功しない…。

そのうち段々と成功に近づき…。

ついに成功する!!!!

そして次のフレーズに移る。


っとこの最後のこれがいけないのです!

出来て次に移ってしまっては、「負け・負け・負け・負け…(中略)…負け・負け・勝ち!、終了。」となってしまいます!

99敗連続して最後にやっと1勝すると、なんだかこれ以降はいつ弾いても「出来るようになった」気がしてしまいます。

事実は、大きな大きな負け越しのままです。



この、ついに掴んだ1勝からが本当のスタートです。

おそらく、1勝してもまた何度も負けることでしょう。

ですが、きっと、「負け」の連続の中に「勝ち」の数が増え始め、そしてついに「勝ち」の連続がやってきます。

そして、新しい能力が根を張り、恒常的な力となっていくのです。


これも、スズキ・メソードの根本的考えの1つです。

飯塚

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2009年08月23日

結晶

8月25日火曜日午後1時から1時55分まで、BSハイヴィジョン クラシック倶楽部にて、イリア・グリンゴルツというヴァイオリニストの無伴奏ヴァイオリン・リサイタルが放送されます。


このリサイタルはこれまでも何度か放送されたことがあるので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。


プログラムの最後に、
ハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンストという作曲家の「無伴奏ヴァイオリンのための6つの多声的練習曲」という曲が演奏されますが、これが本当に本当にスゴイ!!!!


エルンストは
パガニーニに影響を受けた19世紀のヴァイオリニストです。ですからエルンストの曲は基本的に超絶技巧のものばかりです。超絶技巧にも程があります。


自らも偉大な演奏家であり、20世紀の大ヴァイオリニストを数多く育てたことでも有名な
レオポルト・アウアーも、「エルンストのヴァイオリン協奏曲は今までに書かれた最も難しい曲の一つ」と言っています。


残念ながらエルンストの曲はそれほどポピュラーではありません。最近は録音も増えているようですので、これからは少しずつ耳に出来る機会も増えてくるかもしれませんね。


それにしても、このグリンゴルツの演奏は一見、一聴に値します。というか本当にスゴイです!演奏会で取り上げ、あのレベルでの演奏を披露でき得るまでにどれ程の努力があったことか!もちろん、この曲そのものの練習のみならず、そこに至るまでのものも全てです。

演奏し終えた後の小さなガッツポーズが非常に印象的です。

是非、ご覧ください!

飯塚
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2009年08月22日

ありがたい

この9月に、ベーレンライター社から新しいエディションのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲が発売されるようです。これはちょっとワクワクしますね!


と、このことを書く前に、ベーレンライターとは何だ?を解明しておきますと、ドイツの楽譜出版社のことです。


世の中に楽譜の出版社は数々ありますが、このベーレンライターという会社は非常に分かりやすい特色があります。


それは、「作曲家がその手で書き記したものを、出来得る限り、その意図に忠実な印刷譜にして出版する」というものです。


「それって当たり前のことでは?」と思ってしまいますが、残念ながら?世に出回っている楽譜のほとんどは、このベーレンライターのポリシーから外れています。


なぜ外れたものをわざわざ出版するかというと、その方が実用的だからです。


たとえば、今回出版されるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、過去に遡れば相当な数の印刷譜が出版されたことでしょう。


その出版に際して、それを編集したり、校訂したりする方がいます。そうした方々が、明らかな間違いや手書きでは曖昧だった箇所に、訂正・補筆を施してから出版されます。もちろんこうした編集は客観的に行われるのですが、もちろん人間ですから、編者によって判断が異なる場合も出てきます。


それだけでなく、演奏に当たって我々が見たときに、作曲家が(当然ながら)書かなかった、弓使いや指番号や、本当は無かったスラーを付けて弾きやすくしてくれたり、「ここはスタッカートで弾いた方が良いだろう」「ここはリタルダンドすべきだろう」などなど元々は無かった記号を追加してくれたり、時には「ここはこの音のほうが良いかな」という具合に本来とは違う音やリズムに変えてくれたり!


という風に、主観的な数多くの「手」が加わって出版されることがほとんどなのです。ですから、同タイトルながら、楽譜の数だけ異なる内容のものが存在することになります。違いは、見た目だけではなかったのです!


ですが、こうした「手」のおかげで、実用的に、幅広い層の演奏者がその音楽を楽しむことができることも事実です。



ベーレンライターは、こうした後世の「手」を取り除き、「直筆譜どおりに出版」「もし直筆譜が消失した場合には、その道のエキスパートが研究により可能な限り原典に近づけて出版(この場合には詳細な校訂報告が付きます)」してくれるのです。

これは実用譜をわざわざ作って出版してくれることと同じくらい、有難いことです!


本来作曲家が意図していたことは何だったのか?に最も近づけるからです。


ところが最近のベーレンは、なんと実用譜も同時にセットにして販売してくれています。二重に有難いですね!


さて、このベーレン版の「べトコン(ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の通称)」はどのようなものなのでしょうか。カタログでは、オーケストラ用のスコアには100か所以上の訂正と、独奏パートにも音の訂正があると記されております。


いまから非常に楽しみです!(ちなみに私は楽譜を買うだけで満足する性格の典型です。


飯塚

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2009年08月21日

出会いは突然に

今月はじめにお伝えしていた松本の夏期学校でのお話をもう一つ。

夏期学校には、様々な「出店」が並びます。

もちろん、イベントの出店と言えばたこ焼き屋さんやかき氷屋さん!…ですが、夏期学校はやはり音楽に関係したお店、つまり楽器店や楽譜店などなどが来て下さいます。

今年はその中の楽器店で、大きな収穫がありました!

19世紀末から20世紀初めにかけて最も活躍した大ヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイの書いた「エクササイズとスケール」という楽譜が手に入ったのです!

楽譜店の奥に2冊だけ残っていたものを引っ張りだして持ってきていたもので、なんと1冊500円という破格値でした。

もちろん、そのとき一緒にいた九州の小川先生と共に即買いです。

実はこの楽譜はずっと欲しいと思っていたものだったので、非常に嬉しい出会いでした。


古ぼけた楽譜ですが、じっくりと弾いてみたいと思います。

飯塚
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2009年08月20日

1791

夏休みとともに久しぶりのブログになってしましましたが、今日からまた復活したいと思います!

さて、モーツァルトの死因に関して新説が発表されたようですね。

いずれにしましても、モーツァルトはそのお墓さえ特定できない状態ですから、当然死因も推測の域を出ないのでしょうが、やはり一モーツァルト・ファンとしては気になるところです。



H.C. ロビンズ ランドンという音楽学者の書いた「モーツァルト 最後の年」という、非常に面白い本があります。

ランドンは、ハイドンやモーツァルトといった古典派の作曲家の権威で、それに関する著作や校訂した楽譜なども数多く出版されています。

「最後の年」という本は、モーツァルトが亡くなる1791年12月5日までの1年を、数多く残された手紙や証言などを手掛かりにして追っていく内容なのですが、これが大変に興味深く、かつ感動的でもあります。

特にモーツァルトの死の直前の記述は、読む者の心に深く何かを残すに違いありません。



映画「アマデウス」でしかモーツァルトの最期をご存じない方は、是非お読みください!

きっと、レクイエムが聴きたくなります。

飯塚
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2009年08月10日

古くて新しい

早熟の天才作曲家と言えば、誰しも思いつくのがモーツァルトですが、そのモーツァルトに負けず劣らずの才能を発揮したのが、フェリックス・メンデルスゾーンでした。

38歳という若さでこの世を去っている点も、モーツァルトに似ています(モーツァルトは35歳で没しています)。


この二人の作曲家に共通する点はそれだけではありません。

早くから才能を発揮した陰には、両者とも非常に幼いころから音楽教育を受けていたことも、共通しています。

ですから、それぞれの同時代のどの作曲家にも増して、この両者の音楽には、彼ら以前の時代の音楽の遺伝子が強く息づいています。


面白いと思えるのは、今述べたように二人の音楽は非常にしっかりと伝統に基づいていながら、同時にそれまでの音楽にない新しさをとても巧みに表している点です。

時に、「新しい」というと、単に「目新しい」ものを提示するだけに終わってしまうこともあります。

しかし、伝統の先に施された新しさには、説得力が伴います。

音楽や作曲のこと、もしくは音楽史のことをあまり分かっていない場合には、一体何が新しいのか分からないことすらあるくらいですが、そのことが反対に、いかにこの二人の作曲家の音楽がしっかりとした土台の上に築きあげられているかという証拠でもあるのです。


現在最も演奏されているメンデルスゾーンの曲と言うと、もちろんヴァイオリン協奏曲 ホ短調がまず思い浮かびますが、この曲も、それまでのヴァイオリン協奏曲には見られない新しいことがふんだんに盛り込まれているのです。

しかし、何気なく聴いても、そんな難しいことは意識されない。ただただ美しく繊細で、どこまでも聴く者を惹き付けます。むしろ余計なことは考えず、音楽に浸ってしまいます(ちなみにモーツァルトのヴァイオリン協奏曲 第5番も、そうした新しさに満ちた究極の名曲です)。


「永遠のスタンダード」というと、確実なつくりをしていそうでありながら、実は新しさの塊でもある。そんな、一見相反するものがみごとに共存しているところに、さらに魅力を感じてしまいます。

以前ここで紹介させていただいた通り、今年はメンデルスゾーンの生誕200年記念の年に当たります。

メンデルスゾーンに近づくきっかけにしたいですね!

飯塚
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2009年08月08日

生徒さんそっちのけ?

今日も今年の夏期学校の話題を。

指導者の立場からしましても、この松本の夏期学校は大きな勉強の場であります。

全国から、さまざまな指導を受けて集まった生徒さんたちの成果を拝見できることもその理由の一つですが、何といっても経験豊富な先輩の先生方の指導を間近に体験できることが大きいのです。


全国各地に教室があるスズキ・メソードの指導者が、一堂に会する機会が年に2度ないし3度あります。

春のグランド・コンサート(隔年開催)、5月の全国指導者研究会、そしてこの松本夏期学校です。

グラコンの日はコンサートの裏方スタッフとして過ごしますすのであまり当てはまりませんが、指導者研究会では文字通り、4日間朝から晩まで指導の研究と仲間の指導者間での情報交換など、交流を深めながら楽しく毎回勉強させて頂いています。

しかし全国指導者研究会がどちらかというと机に向かって(もちろんそれだけではありませんが)の勉強に近いとすれば、松本の夏期学校は実践の場での勉強といえると思います。


普段なかなか全国を回って各地の先生方のご指導を見学させていただくことは出来ませんから、このような機会は本当に有難いばかりです。

今回学んだことが、また仙台でのレッスンに活かせるよう、頑張って参ります!

飯塚

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2009年08月07日

見よ、勇者は帰る

今日で、2009年の松本夏期学校も最終日です。

最終日になってからお知らせするのも何なのですが、各宿泊場所からレッスン会場までは毎日シャトルバスが運行されており、参加者はそれに乗って移動をします。

ちなみに飯塚は松本駅周辺のホテルに宿泊しておりましたので、駅前発のシャトルバスで移動をしておりました。他にも、温泉街からのバスなどもございます。

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快適に移動できます

午前中の教室レッスンでは、毎日楽しく勉強させてもらった仲間たちと最後の仕上げをし、来年もまた松本で会うことを固く誓った後、お別れコンサートの開かれる総合体育館まで移動しました(もちろんシャトルバスです!)。

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小さなチェロケースの円陣

お別れコンサートも、開校式同様、収容人数の関係で昨年から体育館のメイン・アリーナが会場です。

弦楽A・B両クラス、チェロ科、フルート科、ヴァイオリン科、そして全科合同と、それぞれの成果発表が行われました。別会場の鈴木鎮一記念館では、室内楽クラスの発表も同時進行で行われました。

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出番を待つ弦楽B             そして出番を待つ弦楽A

いつもながら、最後にキラキラ星変奏曲を聴くと、スズキ・メソードの原点はやはりこの中にあるのだということを再認識いたします。どんな上級生たちも、この曲からスタートしたのですものね!


演奏を終えた生徒のみんなは、ヘンデルの「ユダス・マカベウスの『合唱』」を弾きながら退場しました。

それまで集団で演奏していた生徒さん達の一人一人にスポットが当たり、指導者の先生方に拍手で送り出されながら、とても誇らしげな表情で客席に戻る姿がとても心に残りました!



4日間というのは、参加前はちょっと長いように感じますが、実際は本当にあっというまです。

その「もう少し楽しみたかったなぁ」感が、「また来年も来よう!」に繋がるのでしょうね。

今まで参加を躊躇していた方も、初めて松本夏期学校をお知りになった方も、この報告を読まれた方はみんな来年の今頃は松本でお会いしているハズです!

では、また松本でお会いしましょう!

飯塚

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2009年08月06日

ギャップ・キッズ

松本夏期学校、3日目のレポートです。

午前中は昨日と同じく、各レベル毎の教室に分かれてのレッスンです。


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皆朝から一所懸命です

したがって飯塚も昨日に引き続き、全国からの生徒さん達とともに勉強させて頂きました。

昨日練習したことが今日には段階を経ながら身に付いている生徒さん達の成長の早さには、いつも驚かされます。

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ご一緒させて頂いた松村先生から   休憩中の楽器たちの図
生徒さん達へののプレゼント
弓の練習に使いました



午後はやはりグループレッスン、午後のコンサートです。

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巨大モニターにも注目       昨日独奏した2歳の子をまた発見!
                                           手を引いていらっしゃるのはこの子の先生です


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午後のコンサートの出番を待つ独奏者の皆さん

「午後コン」終了後、マスタークラスの見学にも行って参りました。

とても内容の濃い、素敵なレッスンでした!

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残念ながら中はお見せ出来ませんが…

さて、3日目のハイライトは何といっても夜に行われるコンサート「協奏曲の夕べ」です。

オーディションで選ばれたソリストたちが、オーケストラをバックに協奏曲を演奏します。
今年は6人のソリストたち(全員女の子でした)が、それぞれモーツァルト、ベートーヴェン、ハイドン、ブルッフのコンチェルトを独奏してくれました。

伴奏は、井崎正浩先生指揮・夏期学校オーケストラ(主に指導者にて編成されたオケ)です。
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ベートーヴェンのピアノ協奏曲 第3番 第1楽章

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ソリスト全員のカーテン・コール
中嶋会長のご挨拶

みんな大人顔負けの本当に熱のこもった素晴らしい演奏でした!

そんな彼女たちが座っていた舞台袖のイスに並べられた「お守り」代わりのぬいぐるみたちが、演奏で聴かせてくれた迫力と、素の部分とのギャップを感じさせ、とっても印象的でした。


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やはり子供たちの能力は無限ですね!

飯塚

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2009年08月05日

小さくて大きなもの

今日から夏期学校の午前レッスンがスタートしました。

午前中は、自分のレベルに合った教室に分かれてのレッスンが行われます。

上級生はマスタークラスや室内楽レッスンを受講します。

「未来の上級生」たちは事前に登録した曲のクラスに分かれ、全国から集まった友達と共にグループレッスンです!

今年、私 飯塚は本郷小学校で J.S. バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲、通称 ドッペル・コンチェルトの第2ヴァイオリンのクラスをお手伝いさせていただきました。


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2年2組の教室です。

この時期の松本は日中の気温が結構高くなるのですが、窓から時折吹いてくる心地よい風と、この「夏の友」が送り出してくれる心強い風にはとても癒されます。

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夏の心強い友、やや近影

子供たちは2時間20分のレッスンを、休憩を交えながら集中を切らさずに頑張ってくれました!

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頑張ってるみんな!きっと上手になります!

午後には昨日に引き続き、大きなグループレッスンや弦楽合奏です。

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ヴァイオリンはスゴイ数ですね!

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弦楽A:レスピーギです          弦楽B:ヴィヴァルディです

2時50分からは、大ホール、中ホールの2つの会場で「午後のコンサート」が行われます。

飯塚は中ホールのコンサートのお手伝いをさせて頂きました。

コンサートのトップバッターは、なんと大阪から来た2歳の女の子のキラキラ星変奏曲!

舞台に上がるまではお母さんにずっとしがみついて離れなかったのですが、いざ本番となると見事な演奏!とてもとても立派でした!お客様からの鳴り止まない拍手に3度のカーテンコールに答えていました。

始まる前、彼女はとてもぐずっていたのですが、演奏後はとても嬉しそうで、跳ね戻ってくる姿が可愛らしく印象的でした。きっと今日の1コマが、彼女のこれからにとって、本当に大きな意味を持つのかも知れませんね!


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こんな素敵な瞬間に遭遇できるのも、松本夏期学校ならではですね。

飯塚
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2009年08月04日

さあ

松本夏期学校、2日目のレポートです。

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朝の松本駅

今日は生徒さんたちの集合日です。

実行委員の先生方と一緒に飯塚は、午後に行われる開校式の準備のため、松本文化会館に隣接する総合体育館のアリーナの会場作りを朝からしておりました。

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整列用ビニールテープ張り


時間が経つにつれ、全国各地、そして世界9カ国から、大勢の生徒さん・保護者の皆さんが松本文化会館に集まりました。

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素敵なヴァイオリンケース!

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続々と受付を済ませる生徒さん達


午後1時からは総合体育館メイン・アリーナにて開校式が執り行われました。

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生徒さん達も開校式に備えて整列します

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芸術監督・豊田耕兒先生の指揮で夏期学校オーケストラが演奏

今年は昨年以上に参加人数が多かったこともあり、開校式もメイン・アリーナを使って行われました。

文化会館・大ホールが使えないのは残念ですが、参加してくださった皆さんの安全面を第1に考えての選択です。


そして開校式の後、早速グループレッスンも行われました。

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チェロ科は大ホールにて

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フルート科はリハーサル室にて

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小さなフルーティストも出番を待っています!


夜には、今回の夏期学校で講師をして下さる先生方の「ゲスト・コンサート」が大ホールで行われました。

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夜の大ホールです

・ 林 峰男先生、藤原真理先生によるチェロのデュオで、ヘンデルのソナタ
・ 舘 ゆかり先生のヴァイオリン、東 誠三先生のピアノによるショーソンのコンセール
・ 大谷康子先生のヴァイオリン、東 誠三先生のピアノによるクライスラー、ラヴェル、サラサーテなどの名曲集

という豪華なプログラムでした!

このようなコンサートが未就学児でも見聞きできるのは、やはり夏期学校ならではですね。

アンコールで客席から突然登場した大谷先生の演出に、会場も大盛り上がりでした!


明日からは各曲ごとに分かれてのレッスンが始まります。

楽しみですね!

飯塚
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2009年08月03日

いよいよ

いよいよ明日から、スズキ・メソード誕生の地、長野県 松本市にて、第60回 夏期学校が開催されます。

今日からこの松本夏期学校を、現地から毎日レポートして参りたいと思います!


さて、今日8月3日は指導者の集合日でした。

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メイン会場となる長野県 松本文化会館

私、飯塚は会場設営などのお手伝いをさせていただきました。

午後2時半には全国から指導者の先生方も集合し、明日からの夏期学校の打合せも行われました。

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打合せ会が行われた大ホールです

打合わせの後、ヴァイオリン科指導者には講師の舘ゆかり先生による「音」の講義が行われました。

「右腕の脱力」は舘先生(それはひいては鈴木鎮一先生)から常に与えられる課題です。

また、頭で考えて弾くのではなく、身体で感じて弾くことの重要性も強調していらっしゃいました。


明日は、生徒・保護者の皆さんの集合日です。スタッフ、指導者も合わせると総勢4000名もの人が松本に集まります。スゴイ数ですよね!

松本の夏の風物詩が、楽しく安全に執り行われますよう、明日から頑張って参ります!

飯塚


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2009年08月02日

注目

毎年、注目を浴びる作曲家が変わります。作曲家の生没年に合わせ、「〇〇イヤー」としてその作曲家にスポットライトを当て、コンサートで多く演奏されたり、CDなど録音媒体も沢山発売されます。

今年は、
ヘンデルハイドンメンデルスゾーンが当たり年(?)です。

それぞれ、バロック、古典派、ロマン派を代表する作曲家たちですね。

この機会にCDショップなどに出かけてそれぞれの録音などを購入し、親子で曲風を比べてみるのも楽しいかもしれませんね。

よく「CDを買いに出かけても、何を買って良いかわからないです。」というお話を耳にしますが、こうしてその年注目の作曲家のものを聴いてみるのも、一つのきっかけになると思います。

このブログでも、いずれそれぞれの作曲家を取り上げる機会を持ちたいと思います。

飯塚

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