もう十数年も昔のこと。鈴木鎮一先生がまだご健在であった頃のことです。当時鈴木先生は子供たちに人気のあったパンダ(あの動物のパンダです)をもじって、弓先をふらつかせないために、パン で弓を用意させ、ダ で親指に力をこめるパンダ奏法なるものを考え出し、全国の教室で、パンダ・パンダ・・・・とやっておりました。
そこで、私も当時受け持った教室で、「よし、まずはパンダからだ」と思い、レッスン初日の開口一番、当然知らない人はいないものとふんで、「みんな、パンダを知っているね〜」と言ったところ、なんと!最前列におられたムーミンパパのようなお父様が、しっかり手を挙げて、「先生、僕、知りません」といわれました。
当然、皆知っており、レッスンでもやっているはずと思い、既に気持ちは次にやることに移っていた私は、そこで先制パンチを受け、ガクリ・・・・。「な・な・なんなんだ、このお父さんは・・・。」と思いつつ、それではパンダの説明からしなければならないかと思ったその時、ご父兄の中から「ノーベル賞・・・・。」「トネガワセンセイ・・・」等とささやきあう声が聞こえてきました。その瞬間、前日の打ち合わせのことが思い出されたのです。
夏期学校実行委員長より、「今回の夏期学校にはノーベル賞受賞の、あの高名な、利根川 進先生がお子さんをつれて参加されます。どのクラスに入られるかは未定ですが担当の先生はくれぐれも失礼のないように」・・・・・ぎえ〜・・・・当たってしまった〜・・・・なのです。そこで、恐るおそる「あの・・・・失礼ですが、ノーベル賞のトネガワセンセイですか?・・・」とおききしたところ、苦笑いのような、照れたような童顔で「いや〜・・・」とのこと。そこで教室は大騒ぎ。その後のレッスンは何をどうやったか覚えていません。
午前のレッスンを終えると午後のグループレッスンがありますから、あわただしい昼食をとらなければなりません。友人の先生と昼食を食べに入った店でなんと、手を振って「花ちゃんの先生〜」と呼ぶ声がするではありませんか。みると、トネガワセンセイ。花ちゃんとは先程レッスンをした利根川先生のお嬢さんのお名前で、奥様は下のお子さんのクラスにいかれておられたとか・・・。奥様はモデルさんのように美しい方でした。
こんな機会は二度と無いと思い、写真を一緒に撮らせて頂きました。写真が出来たらお送りしますので、ご住所を教えて下さい、と言ったところ、紙に書いて下さったのが、NASA、USA・・・・これで利根川 進宛で届きます。とのこと。流石世界のNASA、さすが世界のトネガワ・・・・。
今でも忘れられない思い出の1つです。
【関連する記事】