同じくモーツァルトの書いたモテット、「エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ) “Exsultate, jubilate, K.165(158a)”」という声楽曲です。
ソプラノが主役になり、オーケストラの伴奏に乗って美しいメロディーを歌いあげる曲なのですが、これがまさに「ソプラノのための協奏曲」とでも言えるような作りをしているのです。
曲全体の構成も、初めに元気で楽しい第1楽章的な部分があり、次にしっとりとした第2楽章が続き、最後に軽快な第3楽章にあたる部分が奏されます。
これが驚くほどヴァイオリン協奏曲を演奏する上で参考になるのです。
特に第5番は、この曲のイメージそのままに演奏することが出来ます。
よく、楽器を弾く人間は「歌うように弾きなさい!」と言われます。
特にモーツァルトではそうです。
しかし、どのように歌えば良いのかというヴィジョンが頭の中になければ、それを楽器で再現することなど出来るはずがありません。
ですから、楽器を扱うものもキチンと声楽を勉強するか…さもなくば、声楽曲をたくさん聴いて、イメージを頭に蓄積しておくことが必要でしょう。
同じ「歌う」でも、宗教曲の厳格なイメージなのか、オペラのプリマ・ドンナのイメージなのか、合唱曲の1パートを担当しているかようなイメージなのか。
18世紀の音楽家たちに広く浸透していた格言的なものの一つに、「歌えないものは弾けない」というものがあります。
楽器は、「楽器」の中で終わってはいけないのかも知れませんね。
飯塚
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