2009年08月28日

田園風

スズキ・メソードの教本の中に収められた曲に、「ミュゼット」の名を持つものが出て参ります。

バッハをはじめ、バロック時代の作曲家達が数多く作曲しました。


この「ミュゼット」は、現代フランス語では「アコーディオン」のことですが、アコーディオンは1800年代に入ってから考案された楽器なので、バロック時代にはまだ存在していませんでした。


ではこの場合の「ミュゼット」は一体何を指しているかというと、「バグパイプ」のことなのです。厳密にいえば「バグパイプに似た構造を持つ、ミュゼットという楽器」なのですが、見た目や音などのイメージは、小さなバグパイプといった感じです。


バロック時代のフランスでは、太陽王と言われたルイ14世がとても踊り好きだったため、王お抱えの作曲家たちは皆、ダンス、バレエの曲を沢山書き残しました。


ですからフランスにおいては、アルマンド、クーラント、サラバンド、ガヴォット、メヌエット、ブーレ、ジーグ、パスピエ、シャコンヌ…などなどは、舞踏会のなかで実際に踊るために作曲したものだったのですね。こうしたダンス曲を一纏めにして「組曲」と呼んだりしています。


ちなみにドイツの作曲家であるバッハも、このような曲を沢山書いていますが、バッハの場合は、実際に踊るためというよりは、フランスの流行りを真似て、フランス風の曲を書いた、と言った方が当てはまるかも知れません。


さて、そのルイ王朝下のフランス貴族達の間に、「田園趣味」が流行していました。ものすごく簡単に言うと、郊外の雰囲気にあこがれ、ピクニックなどして楽しんでいたようです。


バグパイプは羊飼いたちの楽器でもありましたから、その音によって「田園」の雰囲気を楽しんだのでしょう。当時のフランスでは楽器の「ミュゼット」そのものも大変流行したみたいですね。


「ミュゼット」以外の楽器、たとえばチェンバロや、ヴァイオリンや、オーボエや、オーケストラ全体でも、ミュゼットっぽい音楽が演奏されました。すなわち、バグパイプのように、ずっと同じ音の低音が鳴り渡る上に、のんびりとしたメロディーが乗っかっている、あの雰囲気です。


ですから「ミュゼット」というタイトルを持つ曲には、必ず「ずっと同じ音で鳴り続ける低音(ドローンと言います)」が聞かれます。


また、「ミュゼット」は良く「ガヴォット」と結びつきます。ガヴォットを演奏していると、部分的にミュゼットが登場することが本当に良くあります。(モーツァルトのヴァイオリン協奏曲 第4番の第3楽章にも、部分的にこのガヴォット・ミュゼットのペアが出現します。)


そうした場合、少し「田舎っぽく」演奏するのがコツです!?少なくとも、シャキシャキと都会風に弾いてはいけません!


ただ私のように、「身体からみなぎる真の田舎臭さ」を出しすぎてもいけません!

飯塚
posted by suzukimethod at 11:30| 音楽コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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